写真館
2014年4月10日撮影
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秩父鉄道「親鼻」駅前の桜
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車道から眺める桜1
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車道から眺める桜2
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美の山公園内、みはらし園地付近
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美の山公園内、花の森の下
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美の山公園内、花の森
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美の山公園内の桜
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美の山公園内から東の方、車道沿いの桜を見下ろす
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桜接写
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武甲山と桜
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美の山山頂展望台より北西の方を望む
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美の山山頂展望台より南東の方を望む
埼玉県の花の名所
2014年4月10日、埼玉県皆野市と秩父市にまたがる美の山公園へ桜を見に行った。
ここは山の山頂が公園として整備されていて、この公園の名前が美の山公園、
山そのものの名前が蓑山で、標高586.9mの独立峰である。
東京都八王子市の高尾山が標高599.0mなので、
それよりちょっとだけ低いがほぼ同じ高さになる。
美の山公園は関東の吉野山と呼ばれるほど有名な桜の名所で、
「埼玉県に桜の名所をつくろう」という発想から、
10年の年月をかけて約1万本の桜を植栽し、昭和54年4月に開園した。
現在も約100種、約8千本の桜があり、山を覆いつくしている。
桜以外の花も有名で、アジサイは約7500㎡と広大な敷地に約3200株が咲き誇り、
見ごろは6月下旬から7月中旬。ツツジは5種類以上の山ツツジが、約3500本、
5月上旬から下旬にかけて咲き乱れる。まさに美の山である。
今回もいつものように電車を使って行った。山に登るために近い駅は3駅あるが、
東京都に近い順に和銅黒谷、皆野、親鼻で、
どこで降りてもそれぞれのコースで山に登って美の山公園に行くことができる。
今回は親鼻駅で降りて山を登るコースを選んだ。
ちなみにこの美の山公園は山頂付近まで車道が整備されていて、
公園内には駐車場もあるため車で行くこともできる。
ただ気をつけたほうがいいのは、駐車場に停められる台数には限りがあるということだ。
この日は平日だったのでさほど混雑はしていない様子だった。
だが以前に東京都青梅市にある御嶽山に登りに行った時の話だが、
その日は土曜日だったせいか、ケーブルカー滝本駅手前の駐車場はいっぱいで、
それを待つ車の長い列ができているのを見たことがある。
美の山公園でも土日祝日やゴールデンウィークなどは注意が必要であろう。
特急レッドアローで秩父へ
まずJR池袋駅まで行って、
そこから西武鉄道の特急レッドアロー号に乗ることにした。
窓口で切符を買い、改札口に向かって歩いていると、
ホームでは普通列車が到着したようで、もの凄い数の人が降りてきた。
1人で歩いている私が点なのに対して、ホームからは面が押し寄せてくる。
全力で走っている人もいて、以前にも見て思ったことだが、
まるで戦がやってきたようだ。
この面の突撃を受けたらしばらくは通れそうにないので、急いで改札を通過した。
特急はゆったり座れるので快適である。車窓から見える景色は、
最初はずっと市街地だが、高麗駅のあたりから私の好きな山が見えるようになってきて、
さらに桜も数多く見ることができた。
都心の公園など平地に咲いている桜ももちろんきれいだが、
山に溶け込んだ桜というのも、また違った味わいがあって良いものだ。
平地が二次元なのに対して山は三次元、見上げたり見下ろしたり、
いろいろな角度から見られるのがおもしろい。
西武秩父駅に近づいていくにつれて山深い景色になり、
車窓から見える山や桜を楽しんでいるうちに到着した。
はじめての秩父鉄道、
IC乗車券が使えない
西武秩父駅に到着。改札を出て秩父鉄道に乗り換えるために、
すぐ近くにある御花畑駅へ向かう。
事前に調べたところ次の電車が到着するまで10分程度しかないので、
急ぎ足で歩く。秩父鉄道にははじめて乗るが、
スイカ、パスモ等のIC乗車券は全線で対応していないという。
御花畑駅に着くと、小さな駅舎の中は人でいっぱいになっていて、
どんな状況になっているのかよくわからない。
近づいて中をのぞいてみると、どうやらみんな切符を買うために並んでいるようで、
私もその列のうしろに並んだ。駅員さんが声を出して案内をしているのだが、
電車はもうじき来るという。ちょっと焦ってしまう。
切符は券売機1台と窓口の手売り1ヵ所で売っていて、
手売りのほうが速かったりして、そちらで切符を買った。
切符はちょっと厚めで、簡単に手で折り曲げられそうにない。
それを改札で駅員さんにハサミで切ってもらい、ホームへ入った。
これが平日の10時頃の光景である。土日・祝日、ゴールデンウィークなど、
もっと多くの人が来てしまったらどうなるのだろうか。
電車はすぐ到着した。車両は普通にきれいで、全体に塗装が施された旧型車両などではない。
2両編成だが席には余裕があり、ゆっくり座って行けた。
親鼻駅までは10分~15分くらい。途中大野原駅で降りる人が多かったのだが、
そこには何があったのだろうか。
親鼻駅で降りたのは私を入れて3人。駅員さんに切符を渡して改札を出ると、
自然のにおいが少しして、山に着いたという実感がわいてきた。
早速蓑山のほうに向かって歩き出す。線路を渡ると、
もう目の前は車道沿いにたくさんの桜が咲いている。麓まで桜でいっぱいだ。
その車道で横断歩道を渡ったところに案内板が立てられているのだが、
親鼻駅のほうから見ると裏側しか見えず、車道を渡ってみないと表の文字が読めないので、
その存在に気づきにくい。
だが所々にこうした案内板、道しるべが設置されているので、
初めて来た人でも迷いにくいようになっている。
麓には万福寺という寺がある。その万福寺の入口付近にもきれいな花が咲いていて、
桜の1種なのか、名前まではよくわからない。
その花の下にトイレが設置されているので借りた。 美の山公園内にはちゃんと水洗のトイレが整備されているのだが、 そこまで途中にはトイレが無いので、ここで済ませておくといいだろう。
車道沿いにも桜並木
ここから先はいよいよ山に登る。
コースが仙元山コースと関東ふれあいのみちの二つに分かれているが、
今回は関東ふれあいの道を選んだ。どちらを選んでも途中で合流しているので、
好きな方を選べば大丈夫だ。
美の山公園山頂までの道のりは3キロメートルある。久しぶりの山登り。
最後に登ったのはいつだったろうか。自分のペースでゆっくりと登って行く。
途中ぬかるんでいるところもあったが、気にせず淡々と登っていると、
道に桜の花びらが点々と散らばっているのが見えた。
上を見上げると、木々の隙間から桜が見える。
(もう山頂に着いたのか)
上まで登ってみると車道に出た。さすがにまだ山頂ではなく、
地図で確認すると標高300メートルくらいの地点である。
車道ぞいは桜並木になっていて、もし車で来ていれば、車内から見える景色はさぞかしきれいであろう。
ここで少し桜を眺めてから、また登山道の中へと入って行った。
再び登りはじめてから後ろを振り返ると、さっきの車道の桜が木々の間から見える。
どんどん登っていくと、だんだんと桜は見えなくなって、また普通の山登りに戻った。
上のほうから鈴の音が聞こえる。その音は少しずつ近づいてくる。どうやら人が下りてくるようだ。
そういえばここまで誰にも会っていない。この山に入ってはじめてすれ違う人だった。
仙元山コースとの合流地点を過ぎたあたりで、道が斜面ではなくて平面になってきた。
特に休む場所も無くてひたすら登り続けたので、平面がとても楽に感じる。
花粉症なのであまり通りたくない杉林をぬけ、ちょっと登ると道が石段のようになって続いている。
このあたりから、人の手によって整備された道が続く。
この時点では美の山公園まで車で行けるということを理解しておらず、 こんな大量の石をどうやって運んできたのかと不思議に思っていた。 ただ、東京都の高尾山や御嶽山は山道がアスファルトで舗装されていて山頂まで車で行けるという例を知っていたので、 もしかしたらそのパターンなのかとも思っていた。
遅い桜と早い桜
さらに進むと桜ではないかと思われる木がたくさん植えられている場所に出た。 そこにはテーブルとイスがあり、さらにその横には案内板が設置されていて、 地面はこのあたりからはずっと、完全に舗装されている。
案内板に近づいて見てみると、それは美の山公園の案内図で、どうやらここからが公園になっているようだ。 図を見ると、この場所は「みはらし園地」という名前がついているようで、たしかに見はらしが良い。
そしてここでやっと案内図の中の「P」の文字に気が付く。パーキング、駐車場だ。
(なんだ車で楽に登って来られるんじゃないか)
とやっと理解できた。まあそうでもしなければ山頂を公園に整備することなどとてもできないが。
(それで桜は?)
木を見るとほぼ咲いていない。微妙に咲いているものなら無い事もないが。
(あれ、もしかしてやっちゃったかな)
事前にネットで調べた情報だと、七分か八分咲きくらいのはずだったが。
見るとあたり一面咲いていない。そして誰もいない。
咲いている木はないかと歩き続ける。トイレがあって、
そこを過ぎたあたりからようやく人の声が聞こえてきて、何人か人の姿を見ることができた。
さらに歩くと、桜らしきものが一本だけよく咲いているのが見えて、
これでちょっと期待が持てるようになってきた。その先にも何本かの桜らしきものが咲いていて、
いくらかは咲いているものもあるのだと、ちょっと安心した。
上に登る長い階段がある。
ここはまだ山頂ではない。 階段を登ると「花の森」という場所に出たが、みごとに咲いていない。
親切なことに、木の種類とその説明が書かれたプレートも付いているのだが、
どれも聞いたことのない名前ばかりだ。というより、正直ソメイヨシノしか知らない。
上に続いている階段を登り、登りきったところで振り返って、上から自分が来た道を眺めてみると、
何本かの咲いていた桜がとてもきれいに見えた。
このあたりまで来ると、標高からしてもほぼ頂上だと言っていい。 東の方を眺めれば隣の山を見渡すことができて、見上げればきれいな空が広がっている。
平地や市街地で空を見上げると、視界にどうしても電線が入ってしまうが、
山の上にはそれが無く、純粋に空だけが見える。
咲いている桜をさがして歩き続ける。木々の隙間から東方の山がチラチラと見え隠れする。
その木が途中無くなって、見はらしの良いところに出た。
東の山には黄色っぽく見える場所が広範囲にわたってあり、あれはいったいなんだろうかと思ったが、
地図で調べてみると、どうやらゴルフ場があるようだ。
黄色っぽく(黄緑色か?)見えるのは芝だったのか。
前方を見ると、遠くに桜のようなものが何本か見えた。
(いよいよ満開の桜の登場か)
期待を胸に近づいて行くと、思ったとおりソメイヨシノが満開である。
東京でも上野、谷中、千鳥ヶ淵などで見られるが、最初に裏から入ってきて、
遅く咲く品種がほとんど咲いておらず、不安になってしまったために、この満開のソメイヨシノを見た時の感動は一層深い。
だけではなく、美の山公園は自宅からあまり近いとは言えず、電車を乗り継いではるばるやってきて、
自分の足で山を登り、そしてついに満開のソメイヨシノを見たという達成感がある。
本当はこの桜を去年見るはずだった。
しかし仕事の都合で行くことができなくなり、今年は無理矢理時間を作って見に来た。
私は美の山の桜のことを観光ガイドの本を読んで知った。平地ではなく、山の上に咲くその桜の写真を見て、
実際にこれを見に行きたいと思った。それから数年たって、やっと今年見に行くことができたのだが、
自分がやりたいと思ったことというのは、どんな些細なことであっても実行したほうがいいと思う。
無理をしてでもやってしまったほうがいい。そうでないと、その気持ちが心の中でくすぶってしまい、次に進めなくなる。
そうなると同じところで足踏みを続けることになり、その時間が無駄だ。
もしかしたら、何かを手放さないと実行できないかもしれない。
しかもそれは今の自分にとって大切なものだったりする。
しかし本当にやりたいことがあるのなら、自分がしがみついているものから思い切って手を放して、
やってしまったほうがいいと思う。
山頂からの眺め
話を美の山公園に戻す。満開のソメイヨシノも見事だが、見るべきものはそれだけではない。あまり高くはないが山頂からの眺めもすばらしい。
この蓑山の山頂というのは展望台になっていて、というよりも展望台をもってして山頂と位置付けているのか、
そこから山々を見わたすことができ、秩父のシンボル的存在である武甲山や羊山公園も見ることができる。
展望台からおりると、おじさん、おばさんたちの集団に
「おにいさん、写真をとってもらえますか?」
と声をかけられ、ことわるわけにもいかず、集合写真を一枚撮った。
そしてもう時間がお昼なので適当に空いているベンチに腰掛け、となりの山の姿を眺めながら、持ってきたおにぎりを食べた。
食べ終わってちょっとくつろいでいると、また写真を撮ってくださいと声をかけられた。
今度は中年くらいの夫婦で、それを引き受けて写真を二枚撮った。
撮り終わって、奥さんのほうから
「どこから来たんですか?」
と聞かれ、一瞬考えてしまい
「東京からです」
という曖昧でわかりにくい答え方をしてしまった。
普段は東京都以外のよその土地に行くことなど無いから、何と答えていいのかわからなかったのだ。
その奥さんも昔東京の某所に住んでいたことがあるとか、和やかな雰囲気の中でちょっとした雑談をしてからその夫婦とは別れた。
以前に東京都あきる野市の戸倉城跡に行ったときにも、ひと気の無い場所で偶然出会った人と話す機会があった。
意外にも都心から離れたひと気の少ないところに行くと、人との交流や話す機会があるものだ。
蓑山をおりて和銅遺跡へ
時刻は13時くらい。ふと空を見ると、黒い雲が多くなってきて雨でも降りそうな感じだ。
見るものは見たし、そろそろ山をおりようと下山する道をさがしはじめた。
帰りは和銅黒谷駅から秩父鉄道に乗る予定で、途中にある和銅遺跡、和銅製錬所跡も見たいと思っている。
方角としては、和銅製錬所跡まで行くためには南の方へ、途中までは車道を歩くようなのだが、
この時はよくわからず、黒谷駅の方向を示す道しるべがあったので、それが指す道を歩きはじめた。
ちなみに駅名はもともと黒谷であったが、2008年に和銅奉献から1300年を記念して和銅黒谷駅にあらためられている。
そのために下山道の途中に何ヵ所か設置されている道しるべには、昔のまま黒谷駅と書かれている。
おりはじめは車道沿いに植えられた桜がよく見えてきれいだ。桜はきれいだが、空はどんよりとしている。
少しずつ車道から離れていって、地味な山の中に入っていく。時々振り返りながら、小さくなっていく桜を下から見上げた。
さようなら、美の山公園。また来よう。
人ひとりが通れるくらいの狭い山道をじみちにおりて行く。山は登りよりも下りのほうがきつい。
すでに登りで疲れていることもあるが、意外とすべったりもして、ふんばりながら歩くので足も痛くなってくる。
しばらく黙々と下りていると、山道から抜けて住宅が目の前に見えた。
ここで事前に調べた道とは違う気がする、間違えたかもしれないとは思ったが、今来た道をまた登っていくわけにもいかず、
和銅黒谷駅までは行けるはずだと思い、そのまま歩き続けた。
きれいな花が咲いている。畑があって、おばあさんが何やら作業をしている。
その姿をボーッと見ていたら、ふと民家の犬に吠えられてビックリした。チッ。
民家の間を通り抜けると車道に出た。そこから道をくだっていけば駅には行けるだろうと思い歩いて行くと、この車道沿いにも花がいっぱいに咲いている。
桜の一種かもしれないが、そこまで花に詳しいわけではないから名前まではよくわからない。
とにかくきれいで、山頂の公園だけでなく、麓の民家のまわりまで花で埋めつくされている光景は圧巻だった。
クネクネと曲がった車道を下りて行く。すると何やら看板が見えてきた。ここが和銅遺跡へ通じる道の入口らしく、案内板が立てられていた。 ちょっと道をまちがえたかと思ったから、予定どおり和銅遺跡へ行けるようでホッとした。