グラント将軍植樹碑

 グラント将軍ことユリシーズ・シンプソン・グラント(1822~1885)は、南北戦争に従軍して戦功を重ね、 のち総司令官となって北軍を勝利に導いた英雄である。 1869(明治2)年に第18代アメリカ合衆国大統領となり、1877(明治10)年まで二期在任した。
 大統領引退後、1877(明治10)年から1880(明治13)年にかけて家族同伴で世界を周遊し、日本にも来日している。
 1879(明治12)年8月25日、上野公園で開催された大歓迎会に臨み、その記念として、将軍はロウソン檜を、夫人は泰山木を植えられた。 それがここに植えられている木で、今では立派な大木に成長している。 植樹の由来が忘れられないように、1929(昭和4)年8月、ここに記念碑が建設された。

  • グラント将軍植樹碑(撮影)

  • グラント将軍の胸像(

    将軍の言葉「Let us have peace」の文字が刻まれている。

  • グラント将軍と夫人が植樹した木(

  • グラント将軍と夫人が植樹した木を横側から見たもの(

 1879(明治12)年の大歓迎会はどのようなものだったのか。 この時の様子を伝える絵が残っており、そのひとつに古林栄成・作、「上野公園地ニ於テ米国前ノ大統領グラント氏鎗術遊覧図」がある。 これは三枚続きの絵で、武術大会を開いて当時の皇族、権官が歓迎している様子が描かれており、 観覧しているグラント将軍本人の姿はもちろん、夫人の姿も描かれている。グラント将軍関係の絵はほかにも何枚かあるようだが、詳細はわからない。

 グラント将軍植樹碑はどこにあるのか。小松宮親王の銅像の裏手、動物園前にある小さな遊園地のすぐわきにある。 銅像と遊園地の間ということだ。この碑の存在を知る人は案外少ないのではないだろうか。 植樹の由来が忘れられないように記念碑を建設したのに、その記念碑の存在自体が忘れられたら意味がない。 正直に言うと、筆者もここに記念樹と碑があることを知ったのは最近のことだ。 まあ、歴史が好きな人でもなければあまり興味を持たれないかもしれないが、ここにタバコの吸殻が捨ててあるのを見ると、ちょっと悲しくなってくる。